桐蔭学園 → 法政大 → ヤクルト → オリックス

少年野球(シニアリーグ)時代から日本代表として活躍。その後、高校2年、3年の夏の甲子園に連続出場。3年生に髙木大成選手(元西武)、1年生に高橋由伸選手(現巨人)を擁して旋風を起こし、この年の甲子園3回戦ではラッキーゾーンへのホームランを放つ。 法政大学時代は、スラッガーとして活躍。96年の全日本大学 選手権で東北福祉大学を破って学生日本一となり、同年のドラフトでヤクルトに入団。01年の日本シリーズの第4戦で、決勝ホームランを放ちチームの日本一に貢献。ヤクルトで活躍後、02年オリックスに移籍。引退後は、タレントの萩本欣一氏が率いる社会人クラブチーム・茨城ゴールデンゴールズで選手兼コーチを歴任。現在は、獨協大学野球部の臨時コーチや野球塾のコーチとして活躍中。
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中学時代は日本代表に選ばれ、桐蔭学園で夏の甲子園出場、法政大学では大学通算11本塁打を放つ強打者として3年生時に日本一を成し遂げました。そして大学卒業後、ドラフト5位でヤクルトスワローズに入団し、子どもの頃から思い続けた夢を実現。エリートとも言える華々しい野球人生を歩んできた副島孔太さん。しかし運だけではない、すべては夢を叶えるために考え行動し、努力を惜しまない姿がいつもありました。野球エリート・副島さんの子どもの頃のエピソードを含め、野球少年、野球少女へ送る貴重なお話をお聞きしました

軟式を続けるか、硬式を始めるかを決める基準
野球を始めたのは小学1年生の時。野球好きの父の影響で、気づけば野球をやっていました。4年生の時、父のアドバイスで左打ちになろうとしたのですが、その時所属していた少年野球チームでは、もともと右打ちの選手が左打ちになることを許可してもらえませんでした。それがきっかけで、リトルリーグへ入団することになり、同時に硬式野球に移行しました。「いつから硬式を始めるのがよいか」という質問をよく受けるのですが、個人差もありますし、具体的に「いつがいい」「どちらがいい」ということは決められません。ただ、ピッチャーなら軟式のまま続けてもいいのですが、野手は、体の使い方や技術を向上させるためには、硬式の方が良いと思います。野手の打つ、捕る、投げるに関しては、硬式ができれば軟式もできるからです。そしてもうひとつ、一緒に野球をする仲間がいるかどうかということです。これは、軟式か硬式であるかという前に、大事なことです。野球を通じてすばらしい仲間にめぐり会い、この仲間と一緒に野球をしたいと思えるかどうかも、子どもの頃は重要な基準になるのではないでしょうか。私自身は、リトルリーグに入って、小学校や地区以外の選手と出会うことができ、野球をする仲間が増えたことがとてもよかったと思っています。
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強い選手の条件は、よく食べること
子どもの頃、父はいつも試合を観に来てくれました。野球が好きでよくアドバイスをしてくれましたが、技術的なことを超えてチームの在り方のことになると、お互いに熱くなることもありました(笑)。母は直接、野球のことに口を挟むことはありませんでしたが、毎日おいしいものをたくさん食べさせてくれました。肉が好きだったので、いろいろな肉料理を作ってくれました。野球の技術を習得することはもちろん大切なことですが、まずはたくさん食べて強く大きな体になることが、何よりも大切だと思います。強い体は、病気をしにくくなり思う存分練習ができますし、試合でも大事な場面で力が発揮できます。私の子どもの頃と違って、現在はサプリメントを摂取する方法が増えていますが、まずは、ご飯をしっかり食べるという事を基本にしてほしいと思います。


トレーニングも基礎と知識が大切
小学生の頃からトレーニングを始めるのはよいことだと思いますが、自分の体重を使ってできるトレーニングに限った方がよいと思います。また、おもりを使ったトレーニングは、知識をつけて、正しくできるようになってからがいいですね。私は、高校生までは正直トレーニングはあまり好きではなく、大学生になってはじめて必要性を感じ、自主的に行うようになりました。まずはバランス感覚を養うために、自分の体をコントロールするトレーニングと股関節、腹筋、背筋を鍛えることに重点をおくことをおすすめします。私の子どもの頃は、外で遊んでいるだけで、野球に必要な筋肉が鍛えられたものです。今の子どもたちは、外で遊ぶことが減っていると思いますが、小・中学生ぐらいまでは「走る」「バットを振る」ことを続けることで、十分トレーニングになります。


気づく力が野球を上達させる
野球が上達するためには「気づく」ということが大切です。私は、キャッチャーとピッチャーを経験して外野手になったので、他の選手のプレーや練習内容に関して、いろいろなことを見て気づけるようになりました。気づくというのは、単純に目に見えるものだけではなく、知識や経験によって気づけることもあるので、そういう点で多種のポジションを経験することは、とてもよいことだと思います。気づかなければ、自分が何をするべきなのかも分かりません。小学生の時点ではまだ、自分で気づくということは難しいでしょうが、ただ言われたことをそのままやらされているのか、その中に自分の考えを少しでも持つことができるかどうかで、ずいぶん違います。気づく力を養うためには、大人のコーチたちが子どもたちの言葉で話すことや、コーチが一方的に話すのではなく質問をしながら話すことが重要です。さらに、言葉で伝わらない部分は、練習内容を工夫して、体で分かるようにしてあげてほしいと思います。

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当たり前を変えることが、夢への実現につながる
プロ野球選手になるためには「なりたい」と思っていてはなれません。私自身、小学生の頃から「プロ野球選手になりたい」ではなく、「プロ野球選手になる」と言い、当然なるものだと思って、そんな自分の姿をいつも思い描いていました。小学1年生から6年生まで、毎朝6時に起きて、近所のお寺の96段ある階段を10本走っていました。でも、つらいとか嫌だと思ったことはありません。プロ野球選手になるのだから、当たり前だと思っていました。当たり前を変えるという作業は、とても大事なことです。当たり前だと思えばなんてことはない、大変なことだと思うから大変になるのです。

野球の指導で子どもたちによく話すことは「夢に向かって頑張ってください」ではなく、「夢を叶えてください」ということです。夢は見るだけではつまらない、叶えるものです。夢を叶えようとして行動していれば、必ずよい方向に向かうでしょう。そして最後に感謝の気持ちを忘れないでほしいということ。いろいろなことが起きる世の中ですから、野球がしたくても何らかの事情でできない子どもたちもいます。野球ができている環境や、支えてくれている家族に感謝の気持ちを忘れず練習に励んでください。感謝の気持ちがあれば、責任のある行動ができ、それが夢を叶える第一歩なのです。

【取材・文】金木有香
【運営】ベースボールコミュニケーション(BBC)